出典:ドライブ・マイ・カー公式サイト
ドライブ マイカーは長くて退屈?
今日のブログは映画レビューです。
西島秀俊主演の映画
ドライブ・マイ・カーを見てきました。(濱口竜介監督・脚本)
村上春樹原作の話題作として海外からも評価され、数々の賞を受賞しており、もしかしてアカデミー賞も!!と大きな期待が寄せられ、新聞にも大きく広告が掲載されました。
朝日新聞朝刊より
これは観に行くしかないとミーハー根性がむくむく(笑)。ただ、上映時間179分とのことで約3時間…もしかしたら退屈するんじゃないかと、ちょっぴり不安を感じつつの鑑賞。
たしかに登場人物も少ないし、動きも単調なシーンが淡々と流れていく感じなのですが、思わず映画に引き込まれていきました。なぜなら心理描写が仕掛けのようにあちこちに散りばめられているからです。
登場人物それぞれの行動や発する言葉から、深層心理をさぐるゲームのような??さまざまな受け取り方が出来て拡大解釈してみたり、サスペンス映画ではないけれど、実にいろんな推理を楽しめました。
よって、退屈はしませんでした。なかなか面白かったです!!ただし、人の心模様を探ったり推理するというのが面倒くさいという人には退屈かもしれません。
主な登場人物
家福悠介(西島秀俊)/家福の妻:音(霧島れいか)/音の浮気相手:高槻耕史(岡田将生)/ドライバー渡利みさき(三浦透子)
のっけから濃厚シーンとは…
話題作だからと、20代の息子と何も考えず観に行ってしまいました。売店でチュロスとコーヒー買っていそいそと(笑)
まさか映画の、のっけから濃厚シーンがあるなんて思わなかった。館内はだいぶお客さんで席が埋まっていましたが、皆さん身じろぎもせず、当然ですがしーんとして、きわどいスクリーンを鑑賞(西島秀俊のラブシーン❤️)
わたしは、チュロス持ったまま、固まってしまいました(笑)。どーすんのよ、これ。ガブッとかじるにもかじれず…。そういえばポップコーンを買って座席に着いた人もいたけど食べれたかなぁ??(笑)
濃厚シーンと、気まずくなるようなきわどい言葉がポンポン出てきますので、映画を誰かといっしょに観に行く時は要注意です。
緑内障だけではなく密かに同時進行していた夫婦の崩壊…
妻の音(おと)が浮気を重ねていることを知りながらも、常に平静を装い自分を律しコントロールしながら通常運転してきた夫の家福(かふく)
それでもある日、奥さんの浮気現場を自ら目撃してしまう。しかもその現場というのは夫婦の自宅!!いくら冷静沈着な家福とはいえさすがに大打撃だったようだ。抑え切れない動揺と苛立ちをタバコによって鎮めようとするも、なおも制御できぬ感情。
突然、バーン!!!という大衝撃音が館内にとどろいて、私たちは家福が愛車運転中に衝突事故を起こしたことを知る。ケガはなかったものの、家福の心が妻の浮気という衝撃により、大きく壊れてしまったことを暗示させる場面であった。
そしてその際、思いがけず発覚したのが緑内障という目の病気(左目)である。医師の説明によると緑内障は薬で進行を遅らすことは出来ても、完治するということはないとのこと。
ふむふむ、この緑内障という病はこの映画を謎解く一つの重要なピースと見た!
緑内障=夫婦の崩壊といえよう。
病は自覚症状のないまま、密やかにじわじわと進行していた。お互いがお互いを愛するがゆえに夫婦を続けたいがゆえに、病の進行に気づかないフリをしていたのかもしれない。どうせ出来ることといったら、進行を遅らせることしかできないのだから…。
まるでAIのような夫に対する妻の絶望と罪悪感。
夢想シーンで、旦那には言わなかった夢の続きを浮気相手に音はハッキリ言っていた。空き巣の左目にペンを何度も突き刺して殺したと。自分の浮気という行為が夫を殺すに等しい致命的な行為と知っていながら、わざと見せつけることをした自分の罪。自分がやった、自分が殺したと取り乱す夢の中の音。
浮気現場を夫である家福にたまたま見られたのではなく、故意に見せつけたのである。試したのである。妻が浮気をしても普段通りの夫、感情を持たぬAIのような夫の感情を、これならどうだ!!と目の前で試した。それは家福に対する殺人行為と知りながら。
しかし揺るがぬ夫、平静なままの夫に音はどれだけ絶望したことであろう。家福は妻を愛するがゆえに失うことを恐れるあまり、自分の感情を必死に抑え、一切妻を責めることはなかったのだが残念ながら音にはそれが伝わっていなかった。
で、音が2人のこれからについて(別れ話?)何か話を切り出そうとした矢先、突然音は亡くなってしまう。
音が壊れてしまったのは愛する我が子を亡くしたのが原因?
緑内障(=夫婦の崩壊)はいつから始まっていたのであろう?おそらく、2人の最愛の子供である娘が亡くなってから…ではないだろうか。
子供の死因にはふれていなかったが、もしかすると不慮の事故で妻はそのことに何らかの責任を感じていた?家福には告げることができず、取り返しのつかない後悔や悲しみ・喪失感で、心が空っぽ状態だったのかもしれない。
家福と共有できない悲しみであったがために、空虚な心を家福とは埋める術がなかった。空っぽになった心のスキマを埋めようと、一時でも忘れようといろいろな男と関わりをもったのかな??
浮気相手の岡田将生扮する高槻(たかつき)も自分は空っぽだと、口にしていたので空っぽ同士、共鳴し合ったのかもしれない。
高槻という男と音の共通性は空っぽ同士?
音の浮気相手である高槻は、女たらしですぐ女性に手を出して関係を持ってしまう。
しかしもしかしたら、高槻は彼なりに本気で音を愛していた可能性がある。演出家である音の夫、家福が主催する舞台のオーディションに偶然を装って遠路はるばる広島まで駆けつけるのだ。
しかも音が亡くなって2年後に、である。
知りたいから。
音のことをもっと知りたい!すべてを知りたいという激しい思いが2年間も続いていたと言えないか??やっぱり本気で音を愛していた??これほど女性を心から愛せたのは初めてだったのか??
だがオーディションで知り会った共演者にもすぐに手を出す高槻…。相も変わらず心が空っぽのようだが、もしかしたら音と過ごすひとときだけは満ち足りていたのかもしれない。
音の本当に愛する人は家福だとそんなことはわかっている、だけど思いを止められなかった高槻。
高槻は家福と違って感情や欲求をコントロールできない男。音と生活を共にし、ベッドを共にする夫がどんな人物なのか、見たくて見たくて、知りたくて知りたくて我慢出来なかったのだろう。
コントロールはできないが、激しいまでの人間らしい感情が高槻にはある。狂おしいほどの嫉妬も。音は家福にも人間らしく感情をむき出しにして自分と向き合ってほしかったのかな。
高槻によると夢想シーンで、私がやった(殺した)と音は繰り返し口にしていたそうなので、子供のことも夫のことも殺したのは自分だと責めていたのかもしれない。
夫婦は修復可能だったのか?再生できなかったのか?
もう早くからとっくに夫婦の関係は壊れていたのだと、緑内障と診断された場面から私は察した。お互いが愛し合っているのになぜに崩壊しなくてはならないのか?前述したように、音は娘を失くした喪失感と取り返しのつかない後悔から立ち直れずにいたのであろう。
緑内障は進行を遅らすことは出来ても、完治するということはないとのこと。よって家福と音が夫婦関係を続けるためには、緑内障同様、進行を遅らすための薬がずっと必要であったということだ。
その薬とは一体、ナニだったのだろうか。
それはお互いがお互いの感情を抑えて暮らすこと。それぞれが互いを見てみぬふりして暮らしていくこと、それが崩壊の進行を遅らせる薬だったのかな??
しかし別の薬もあったはず。再生ができたようにも思えるのだ。音もきっかけを作ろうとした。意を決して別の薬を選ぼうと思った矢先に命を落としてしまった。
映画を観終わって思ったのは、おそらく音が死ななければ他のみんなは死んでたのではないかということ。高槻もドライバーのみさきも、家福も。。。
音は死んだけど、他は音のおかげで再生できた感じ。結局みんな空っぽだったんだろう。
でも本当は音が死ななくても生きているうちに、再生やり直しはできたのだ。しかしそれも叶わなくなった今、現実をすべて受け入れて生きていかねばならない。どんなに苦しくても。
家福は最後に「僕は正しく傷つくべきだった」という言葉を吐き出した。これから先の人生は、逃げたり見て見ぬフリをせず自分の気持ちに正直に生きていけるのではないだろうか。
家福は真っ赤な愛車をとても大切にしていて、操縦に強いこだわりを持っていた。人に運転させたくない。自分だけがハンドルを握りたい。
愛車を妻の音だと解釈してみれば、愛車同様、音という愛しい妻を誰にも決して触らせたくなかったはず。まして妻を操縦する他の男の存在など許せるわけがないのである。自分の車のハンドルは自分が握りたかったのだ。
その感情をそのまま妻にぶつけ、吐き出して愛する妻と本気で向き合えばよかったのに、何事もなかったかのように普段通り妻に優しく接した。
妻はそんな夫の態度にどれだけ絶望したことか。狂うほどに妬いてもらいたかったはず、めちゃくちゃ怒って、女房は俺のものだ!!何をする!!と、プライドをかなぐりすてて男から引き離してほしかったはず。
最後にひとこと
今回の感想は家福とドライバーみさきの関係にまで、話が及びませんでした。家福と音と高槻の話に終始してしまいました。すみません。。。
解釈ができないシーンや、もっと奥深くを探ってメスを入れてみたい箇所がいくつもありました。なのでもう一度見て見たい!!という気持ちはヤマヤマなのですが、なんといっても3時間映画。
いつかテレビ放映される時を待とう(笑)
学び
社会の中で生きていくには自分の感情をコントロールするのも大切だが、家庭の中ではある程度感情吐き出しても良いのではないか。自分の気持ちに正直に生きることは自分を大事にするということ。
ラストシーンはドライバーのみさきが韓国で家福の愛車を運転して、買い物に来たらしい場面で終わった。素直に思ったのは、みさきと家福は結婚したんだな、と。2人の幸せを祈りたい☆
そうそう!みさき役の三浦透子さん、ずーっと女優の田畑智子さんだと思って見ていて映画館を後にしました。ぜんぜん違ってた!!いやぁ~よく似てました。
ドライブ・マイ・カー公式サイト
こっちが田畑智子さん
出典sankei.com
奥の深~~い、村上春樹原作のドライブ・マイ・カーの感想でした。
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韓国の映画で、こちらもビッグな賞をたくさん受賞しています。でも感想はタイトル通り、良い印象はなかったです。韓国の格差社会の闇が描かれた点では考えさせられる映画でした。